脳血流が身体に与える影響

頭蓋内の血流が脳神経系に様々な影響がある事は誰もが想像できると思います。では脳の血流を良くする方法は何か?と質問されると自信を持ってこれが効果があります!とは言い辛くはないでしょうか?

しかし事実として私が知る幾つかのアプローチは脳血流量を向上させ、その中には科学的に検証したデータもあります。

ただ、脳血流の改善と聞くと動脈血を促進する事をイメージしないでしょうか?

血液は血管内を通るわけですから例えるならば道路と同じです。道路で交通渋滞があると先には進み辛く目的地まで到着するのに時間が掛かりますね?

血液循環もそれと同じように(イメージとして)流れが滞っていると新鮮な血液が行き渡り辛くなると考えられます。

そこで、新鮮な動脈血を届ける前に渋滞している静脈血を廃液(ドレナージ)してあげることが重要と考えてています。

でも静脈血の滞り?と聞いてもピンと来ないかも知れません。血管内は見えないのでは?と考える人もいるでしょう。

その静脈血を見る方法は鍼灸師お得意の望診です。

望診は顔や身体を見て健康状態を確認する方法で、顔・目・舌・皮膚・髪・爪・手足の状態から判断します。

静脈血の滞りを東洋医学で言うと、『血瘀や瘀血』と指します。

細胞は動脈血から酸素と栄養を受け取り機能を維持しているため、滞りがある部位は退行が早いと考えられます。逆に循環が良くなると細胞は若返るとも言え、実際に若々しい方の組織は肌艶が良く健康的な状態です。

では、本題の頭蓋内の静脈血の滞りを改善する方法を検討します。

頭蓋骨の内と外を連絡する静脈系は様々あって頭蓋内の静脈圧は内頚静脈系と外頚静脈系のバランスで成り立っています。

頭蓋内の静脈血の流れの多くは頚静脈孔を介して内頚静脈へと流れますが、それ以外にもさまざまな経路があります。

顔色に直接影響が出ると考えられる経路が、海綿静脈洞から上眼窩裂を通り、上眼静脈、そして顔面静脈へと流れる経路です。

ダイレクトに顔面部へのアプローチをするのも一つのドレナージとなりますが、より効果的な方法と考えるとそれ以外も考察する必要があるでしょう。

そこで誰でもあるわけではありませんが次のような流出経路があり、それらへのアプローチは静脈血のドレナージを促進すると考えられます。

それは、後頭導出静脈、盲孔 、頭頂導出静脈です。

後頭導出静脈(後頭導出管)は横静脈洞あるい静脈洞交会から骨を貫いて頭蓋外に連絡します。

盲孔は前頭蓋底を通る鶏冠の前に存在します。

頭頂導出静脈は上矢状静脈洞から頭蓋骨を貫いて外頚静脈系に流出します。

その流出経路を触診出来る場所が、後頭導出静脈と頭頂導出静脈です。

後頭導出静脈は、外後頭隆起直下(静脈洞交会)ならびに上項線(横静脈洞)にあります。

頭頂導出静脈は、矢状面上の篩骨~前頭骨~頭頂骨にあり、ツボで言う印堂~神庭~百会がランドマークになり重要です。

頭蓋内の静脈血の流れを改善するには?
ですが、これまでの情報から考察すると『頚静脈孔』『後頭導出静脈』『頭頂導出静脈』のリリースを行う事で改善が出来ると考えられます。

これらの情報があれば様々な方法でアプローチをすることが可能となるのではないでしょうか?

症例を挙げると、

ベッド上で安静が多い方は後頭部の圧迫により後頭導出静脈の流出路を塞いでしまっているようなものです。

静脈血が鬱血し新鮮な動脈血が流れ辛い状態になるため、顔色は悪く眼球が眼窩へ引っ張られて窪む事や、目が充血し目の周囲は黒くなります。顔面静脈が通るラインも同様に窪み黒っぽく肌艶が悪くなります。頬が痩けると言うと分かりやすいと思います。髪の毛は傷み白髪や抜毛、切れ髪も増えます。

そして、不穏・食欲不振・便秘・下痢・目眩・不眠といった自律神経障害や原因不明の発熱や疼痛も生じやすくなります。

実際に私の患者さんでパーキンソン症候群の方ですが、ある日症状が悪化していました。たまたまドクター往診がありナースさんも最近不穏が強いんです、、と話をしているのが聞こえました。

私は後頭導出静脈の流出に問題を見つけ、後頭導出静脈、頚静脈孔、頭頂導出静脈の3つをリリース。同時に頭皮鍼をし脳血流を促しました。施術後に不穏は無くなり症状は落ち着き、その翌週も症状は安定しています。

週に1回の介入で先週よりも症状が悪化している。なぜそうなったのかを考察します。

施術面のみの考察であれば先に述べた内容ですが、そうなるにも原因があるのではないか?患部以外に問題は枕にあり枕が硬く高すぎた事で後頭骨に圧力が強く掛かったことが原因ではないだろうか?

施設では寝具をリースで使用していることが多いため 、急に枕が変わっていることも少なくありません。自分に合っていない寝具は時に症状を悪化させる原因にもなります。

今回のケースもですが、施術以外の環境要因として体位を変えて除圧することがいかに重要であるかを示しています。ただ全自動ベッドで体幹を除圧出来ても枕までは考えが行かないものですから、そこは施術師の対応ひとつで予後が変わってきます。

※安静が多い患者さんの枕のポジショニングは重要です。

※枕を変更できない場合が多いため、その際は枕の形を整えるだけでも負担が減ります。在宅の場合は必要に応じ理由を説明し交換を勧めます。

私は症状には身体のどこかに原因があると考えています。それをいかに的確に見つけてあげることと、治療以外にもその原因の引き金になるかもしれない環境要因についても考察し対処することでQOLが向上することは多くあります。

長引く痛みや自律神経障害などなど、、
今一度脳血流について考えてみてはいかがでしょうか?

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